BI探検ノート

公的データの「再算定」に注意: 長崎市の観光客数が +56% にも +43% にもなる理由

約5分

目次
  1. 何が起きたか
  2. Power BI で2本並べる
  3. つくり方
  4. 注意したいこと
  5. 確認したこと・していないこと
  6. 参考

確認日2026年10月19日。県の観光統計の本文(令和6年版・令和7年版)と、手元のデータで確かめました。確認できていないことは、末尾にまとめました。

長崎市の観光客数を、2022年から2025年で比べたら、数字が二通りになりました。

結論(30秒版)

  • 公表値をそのまま比べると +55.9%。各年版の前年比をつなぐと +43.2%。差が出たのは、県が前年の値を再算定しているからです。
  • 令和6年版の本文には、長崎市の令和5年(2023年)の値を、推計方法の変更で再算定したと書かれています。見直しの前の2022年と、後の2025年を直接比べると、同じ基準の比較になりません。
  • 同じ基準で比べたいときは、各年版の「前年比」をつなぎます。Power BI では、折れ線を2本並べると、差が見えます。

何が起きたか

県の観光統計は、毎年、前年の値を載せ直します。令和6年版の本文には、次の趣旨の記載があります。

一部市町の調査・推計方法の見直しに伴う再算定は、前年に限り行っていることから、過去の公表値との比較にあたっては留意が必要である。(令和6年版 本文)

長崎市は、令和6年版で、令和5年(2023年)の値が再算定されました。本文には「宿泊税申告実績や人流データサービス、観光消費額等調査の活用に伴う推計方法の変更等」とあります。観光客延べ数は、手元の整理では 8,117,457 人から 8,838,752 人になりました。

長崎市の2022→2025年は、図のとおりです。

長崎市の観光客延べ数。2022年と2025年をそのまま比べると +55.9%。間の2023年が再算定されているため、各年版の前年比をつなぐと +43.2%

直接比べる方は、2022年(見直しの前の方法)と2025年(見直しのあとの方法)を比べています。つなぐ方は、各年版の中の「当年と前年」という、同じ方法で作られた2つの値だけを比べています。

どちらが正しいというより、見直しをまたぐ比較に、直接比較は向かないということです。

Power BI で2本並べる

折れ線グラフに、次の2本を、2019年=100 の指数にして重ねました。

  • 公表値を、そのまま指数にしたもの
  • 各年版の前年比をつないだもの

Power BI で作った、長崎市の2019年=100 の指数の折れ線グラフ。濃い線(連鎖)と明るい線(直接比較)が、2023年から開く

濃い線が連鎖、明るい線が直接比較です。2017年から2022年までは、2本はほぼ重なります。2023年から開き、2025年には、直接比較の方が上に出ます。

2015〜2016年に差があるのは、別の再算定の影響です。手元の報告書では、2018年版で、全市町の2017年値が再算定された、とされています(この記事では、その確認はしていません)。

自分で確かめるには

電卓で確かめられます。

  • 直接: 10,052,499 ÷ 6,448,174 = 1.559(+55.9%)
  • 連鎖: 次の3つをかけます。
    • 2023年版: 8,117,457 ÷ 6,448,174 = 1.259
    • 2024年版: 9,477,539 ÷ 8,838,752 = 1.072
    • 2025年版: 10,052,499 ÷ 9,477,539 = 1.061
    • 1.259 × 1.072 × 1.061 = 1.432(+43.2%)

各年版の前年比は、その年版の「当年値 ÷ 前年値」です。値は県の本文・資料編に載っています。

つくり方

連鎖指数は、前の年の指数に、その年版の「当年値 ÷ 前年値」をかけて作ります。

指数(年) = 指数(前年)
         × 当年版の当年値
         ÷ 当年版の前年値

基準の年(2019年)を 100 とします。

私のレポートでは、この指数は、Power BI の中ではなく、読み込む前に Python で計算しました。読み込んだ表(列は 市町・年・方式・指数)に対して、Power BI のメジャーは、2022年と2025年の指数の比をとって増減率を出しているだけです(列名と方式名は、読みやすいよう短くして載せています)。

連鎖_2022から2025 =
VAR StartV =
    CALCULATE (
        SUM ( trap_series[指数] ),
        trap_series[年] = 2022,
        trap_series[方式] = "連鎖"
    )
VAR EndV =
    CALCULATE (
        SUM ( trap_series[指数] ),
        trap_series[年] = 2025,
        trap_series[方式] = "連鎖"
    )
RETURN
    DIVIDE ( EndV, StartV ) - 1

「直接比較」のメジャーは、方式の名前だけが違う、同じ形です。実際のメジャーには、どちらかの値が空のときに、空白を返す条件も入れています。

注意したいこと

  • 再算定は、長崎市だけではありません。令和6年版の本文では、長崎市のほか、諫早市、川棚町などの市町の名前が挙がっています。比べる前に、「再算定について」の注記を読みます。
  • 再算定は前年に限られるため、2年以上前の値は載せ直されません。長い期間を比べるほど、基準の違う値が混ざります。
  • 令和7年(2025年)の値は、翌年の版で再算定される可能性があります(過去の版で、前年の値が再算定された例があるため)。
  • この記事は、比べ方の話です。観光客が増えた理由や、人口との関係は、書いていません。

確認したこと・していないこと

確認日: 2026年10月19日。

確認できたこと

  • 令和6年版・令和7年版の本文(PDF)に、再算定の説明と、「前年に限り行っている」という注記があること
  • 令和6年版の本文に、長崎市の令和5年値の再算定と、その理由の記載があること
  • 手元のデータから、長崎市の直接比較 +55.9%、連鎖 +43.2% を、私が計算し直して、一致したこと(令和7年版の当年値 10,052,499 人、令和5年の再算定前後の値を含む)
  • Power BI のレポートに、2方式の指数の表と、上のメジャーが入っていること

確認できていないこと

  • この記事を書いた日に、Power BI Desktop でレポートを開き直してはいません。画像は、先に書き出したものです。
  • 他の市町や、観光客数以外の項目(消費額など)で、同じ傾向になるか
  • 2025年値が、翌年版でどう変わるか(まだ出ていません)
  • 県のデータの利用条件の細部。元データは載せず、引用は必要な数値に限り、出典を書いています。

参考

  • 長崎県 観光統計(令和6年版・令和7年版 本文)。県の公式サイト(https://www.pref.nagasaki.jp/)の観光統計のページに掲載されています。取得日は 2026年10月13日です。

この記事で使った用語

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